平蔵の寺子屋通信

方位と色と季節

しい寒さが続いております。ですが、暦の上ではもう春です。これから段々と温かさが増して、淡いピンクの桜が私たちの目を楽しませてくれるでしょう。淡いピンクは春の象徴の色ではありますが、漢方薬の世界では五行説に沿って方位(五方)や色(五色)、季節(五季)などが定められています。北は玄武(げんぶ)(黒)で季節は冬です。西は白虎(びゃっこ)(白)で秋、南は朱雀(しゅじゃく)(赤)で夏、東は青龍(せいりゅう)(青)で春に配当されています。五行ですのでもう一つ中央は黄竜(黄)土用の日となっています。玄武、白虎、朱雀、青龍、黄竜は中国神話の架空の聖獣です。

花粉症は年間を通じて様々な植物で引き起こされている疾患です。多くは春のスギやヒノキの花粉が原因ですが、最近は秋にも同様の症状に悩まされる方も少なくありません。漢方治療の代表的な処方として挙げられるのが「小青龍湯」でしょう。春の色である青色「青龍」の名称が与えられたことからも、この処方が作られた当時から春のくしゃみや鼻水に悩む患者さんが多数いたのかもしれません。他に予防的に用いられる処方として「玉屏風散」(ぎょくへいふうさん)があります。黄蓍(おうぎ)、白朮(びゃくじゅつ)、防風(ぼうふう)の三味からなります。益気固表(えっきこひょう)という作用をもつ方剤で、衛気(えき)という皮膚の粘膜を保護する働きを強め、風邪(ふうじゃ)であるウイルスや花粉など外邪の影響から身体を守る働きが期待されます。ですから虚弱体質で疲労倦怠感、寝汗などにもおすすめです。これから本格的な花粉のシーズンです。花粉症に対する漢方薬は体質により様々です。体質に合った漢方薬をお勧めいたします。