しつこい咳の悩みに漢方! 体質に合わせた漢方薬を手に入れる方法

十字屋平蔵薬局 薬剤師 富居博典

記事監修
十字屋平蔵薬局 店長・薬剤師 富居博典
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咳は風邪の症状のひとつとして、誰もが経験したことがあるものです。自然に治るものがほとんどですが、「いつまでも咳だけが残っている」「夜中にせき込んで眠れない」など、しつこい咳に悩まされることも少なくありません。そんな長引く咳には、漢方薬が有効であることが知られています。

この記事では、しつこい咳の原因や症状、漢方による対処法ついて説明しましょう。

  1. しつこい咳について
  2. しつこい咳と漢方について
  3. しつこい咳に用いられる漢方薬
  4. 漢方薬の飲み方や利用法
  5. しつこい咳と漢方に関するよくある質問

この記事を読むと、漢方におけるしつこい咳の対処法や咳のタイプ別におすすめの漢方薬について知ることができます。

1.しつこい咳について

初めに、しつこい咳の原因や症状・対処法について見ていきましょう。

1-1.しつこい咳の分類

1-1-1.乾式の咳と湿式の咳

咳は風邪やのどの炎症などによって起こる症状です。咳の状態によって大きく2つに分類することができます。1つは「コンコン」という乾いた咳、もう1つは、痰(たん)がからんだ「ゴホンゴホン」という湿った咳です。

1-1-2.急性と慢性の境目は3週間

咳の持続期間によって、急性か慢性かに分かれます。咳が出始めて3週間以内なら急性、3~8週間は遷延(せんえん)性、それ以上は慢性です。咳は意外と体力を消耗します。長引くと睡眠不足など日常生活に支障が出ることもあるでしょう。また、別の疾患が隠れていることもあります。たとえ症状が軽くても、しつこい咳が3週間以上続いたら専門医を受診したほうがいいでしょう。3週間以内でも激しい咳が続くときは一度受診することをおすすめします。

1-2.しつこい咳の原因となる病気は

しつこい咳が続くときは、風邪以外の原因が考えられます。咳の原因となる病気について知っておきましょう。

1-2-1.急性の咳

  • 風邪:咳の原因のほとんどを占める。その9割はウイルス性
  • 急性気管支炎:気管支周辺が炎症を起こす呼吸器疾患
  • 肺炎:肺に細菌やウイルスが侵入して起こる
  • 気胸:肺に穴が開く

1-2-2.3週間以上続くしつこい咳

  • 感染後咳嗽(がいそう):風邪などのあとに乾いた咳が続くもの
  • 咳ぜんそく:夜中や朝方に激しい咳がしつこく続く。気管支ぜんそくのようなゼイゼイ・ヒューヒューいう呼吸の異常は見られない
  • 気管支ぜんそく:気道の慢性的な炎症により起こる。初期には無色の痰が出る
  • COPD(慢性閉そく性肺疾患):慢性気管支炎、肺気腫、気管支拡張症など、慢性的に痰のからむ湿った咳が出る
  • 結核:湿った咳が長引く。高齢の人に多い
  • 肺がん:乾いた咳が続く。レントゲンやCT検査でわかる
  • 胃食道逆流証:胃液が食堂に逆流する。乾いた咳が出る

1-3.治療法について

咳は本来、気道内の細菌や異物を体外へ出すために起こる生体反応です。そのため、急性期には咳止め薬などでむやみに咳を抑えるのはよくありません。しかし、夜間の咳で眠れない場合や気管支ぜんそくの発作的な咳には、薬を適宜用います。治療に使われる薬剤は、呼吸を楽にする気管支拡張剤や気道の炎症を抑えるステロイド剤などです。

1-4.しつこい咳の注意点

咳が続く原因となる疾患は多岐にわたります。それぞれ使用する薬剤や治療法が異なるため、自己判断は禁物です。中には肺がんや肺結核など、発見が遅れると命にかかわる病気が原因のこともあります。「たかが咳」と放置しないで注意深く観察し、早めに受診しましょう。

2.しつこい咳と漢方について

症状だけでなく心身全体を見る漢方の考え方で、しつこい咳への対処法を見てみましょう。

2-1.漢方における、しつこい咳の考え方

漢方医学は、患者さんを総合的にとらえる全人的医療の考え方をベースに、生薬を組み合わせた漢方薬を用いて自然治癒力を高めるアプローチをします。咳や痰においても、単に症状を抑えることが目的ではありません。症状の原因となっている体の状態を見極め、全体のバランスを整えることを目指します。
ここで、全体を見るための指標となるのが、「陰・陽(いんよう)」「気・血・水(きけつすい)」という考え方です。気は生命活動のエネルギー、血は全身に栄養を運ぶ血液、水は水分代謝や免疫を現します。健康なときはこの3要素がバランスよく体の中を巡っている状態です。流れが滞ったり過不足が生じたりすると、不調として現れます。

2-2.漢方による咳のしずめ方

漢方では、咳は「肺」の働きと関係すると考えられています。漢方における肺は、西洋医学とは違い、呼吸だけでなく免疫や体温調節にも関係し、気(き)や水(すい)を体表に送る役割を果たす臓器です。肺の働きが弱まると、粘膜・皮膚の潤いや炎症に影響し風邪をひきやすくなります。そこで、漢方薬を用いて気・血・水のバランスを整え、気道の状態を改善することで咳をしずめていくのです。

2-3.漢方のメリット、漢方が向いている場合

漢方のよさは、一人ひとりの体質や病態に合った薬を処方してもらえることです。そのために、「証(しょう)」という指標を用い、体質を分類します。体力や抵抗力、症状の出かたによって証が異なるため、同じ症状でも、違う漢方薬が処方されるのです。
漢方は、体質に合わせた処方により、症状を改善するだけでなく体質の改善にも役立つため、慢性的な疾患に向いています。

3.しつこい咳に用いられる漢方薬

漢方では、前述の「気・血・水」と「証」によって生薬を調合します。ここでは、しつこい咳によく用いられる漢方薬をご紹介しましょう。

3-1.麦門冬湯(ばくもんどうとう)

対象:乾いた咳・風邪のあとの長引く咳に/体力中等度以下の人
熱によって体の「水」が失われている状態のため、乾燥すると症状が悪くなる方に効果的です。粘膜や気道を潤し、体に栄養を届ける機能を高めます。痰が切れにくいとき、気管支炎にも効果が期待できるでしょう。

3-2.五虎湯(ごことう)

対象:激しくせき込むとき、黄色で切れの悪い痰が出るとき、気管支ぜんそくに/体力中等度以上の人
激しい咳が出るのは、体に熱を持ち肺が潤いを失っている状態です。五虎湯(ごことう)は、熱や腫れをしずめる石膏(セッコウ)や気管支拡張薬と同様の作用をする麻黄(マオウ)、去痰作用のある杏仁(キョウニン)など5種類の生薬を組み合わせています。体がひどく弱っている人、高血圧など循環器系に既往がある人には向きません。体が温まると症状が悪化する人に適しています。

3-3.竹茹温胆湯(ちくじょうんたんとう)

対象:湿った咳に、咳や痰が多くて安眠できないときに/体力中等度の人
症状が長引いて消化器の働きが衰え、消化・吸収がうまくいかずに余分な水分を生じた状態に用いられる漢方薬です。消化器の働きを助け、余分な水分を排出します。

4.漢方薬の飲み方や利用法

漢方薬は体質や症状に合わせた処方のものを飲むことが大切です。自分に合った漢方薬を手に入れる方法をご紹介しましょう。

4-1.専門家に相談するメリット

漢方薬は一般薬局で市販されているものもあります。しかし、種類も多く、自分に合うものを判断することは難しいものです。そんなときには専門家に相談しましょう。
漢方薬局には、漢方薬の知識を持った薬剤師がいます。病態や体質に合った漢方薬を処方してもらうことができ、養生指導もしてもらえるでしょう。

4-2.漢方薬局の利用方法と費用

4-2-1.漢方薬局の無料相談

漢方薬局を利用したことがない人は、まずは無料相談を利用してみましょう。「十字屋平蔵薬局」では、電話またはホームページから相談を受け付けています。漢方薬に関する疑問や体の悩みなどを相談してみてください。

4-2-2.費用について

漢方薬というと高いイメージがありますが、市販薬と変わらず気軽に利用できるものもあります。気になる費用は、成人の場合1日500円(税抜き)前後です。風邪の場合は3~7日の処方で1500~3500円(税抜き)となります。

4-2-3.漢方薬の飲み方

漢方薬は基本的に食前や食間に飲みます。飲み忘れがないように、毎日同じタイミングで飲みましょう。漢方薬には煎じ薬(液体)、エキス剤(顆粒)、粉薬、錠剤などいろいろな形態があります。粉薬が苦手な場合は錠剤を処方してもらえることもあるので、相談してください。

5.しつこい咳と漢方に関するよくある質問

しつこい咳と漢方に関するよくある質問をまとめました。

Q.咳をすると痰に血が混じるので心配です。
A.咳のし過ぎでのどの奥が切れてしまうことによる出血は心配ありません。無理して痰を出そうとしないようにしましょう。しかし、血痰は重大な病気のサインということもあるため、量や回数が増える場合は受診をおすすめします。

Q.漢方薬はどのくらいで効果が出るでしょうか?
A.漢方薬のタイプによって違います。風邪など急性症状に処方される漢方薬は、1~2回で症状の緩和を感じることができるでしょう。一方、慢性疾患に用いられるのは飲み続けることで効果が出るタイプです。この場合、2週間から1か月で効果が感じられます。体質改善などは3か月以上かかることもあるでしょう。長期間服用しても効果を感じられない場合は、自分の体質や病態に合っていない可能性があります。

Q.西洋薬と併用はできるでしょうか?
A.基本的には問題ありません。しかし、組み合わせによっては注意が必要です。漢方薬だけでなく西洋薬にも詳しい薬剤師に相談しましょう。

Q.漢方薬に副作用はありますか?
A.漢方薬は生薬が原料です。効き目は穏やかで副作用は少ないといわれていますが、体質に合っていないと副作用が出やすくなります。

Q.漢方薬の効果的な飲み方を教えてください。
A.原則として「あたたかい状態」で飲みます。エキス剤や粉薬も水ではなく白湯(さゆ)で飲むようにしましょう。

まとめ

しつこい咳は、風邪以外の病気が原因となっていることが多いものです。咳は体力を奪うため、長引くと免疫や抵抗力も弱まり、病態が進行したりほかの病気を併発したりする可能性も出てきます。「咳ぐらい」と放置しないで、体質に合った漢方薬を取り入れてみましょう。

十字屋平蔵薬局 店主 富居 博典

監修者

富居 博典
十字屋平蔵薬局 店主

所属研究会・勉強会
東洋漢方研究会/伝統漢方研究会緑健会日本中医薬研究会

東京薬科大学卒業後、総合病院・調剤薬局での実務経験を経て、漢方専門薬局『十字屋平蔵薬局』を開業。

漢方薬だけでなく病気や症状・治療薬・医療全般についても精通しており、一人一人の治療経過や薬歴を踏まえた提案・養生指導が好評を得ている。地域情報誌にて健康コラム『平蔵の漢方相談』を連載。15年以上続く長寿コーナーとなっており、長きにわたって地元の人々に親しまれている。


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