大腸がんの治療と漢方薬にできること、できないこと

十字屋平蔵薬局 薬剤師 富居博典

記事監修
十字屋平蔵薬局 店長・薬剤師 富居博典
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可能な限り信頼できる情報をもとに作成しておりますが、あくまでも私見ですのでご了承ください。内容に誤りがあった場合でも、当ブログの閲覧により生じたあらゆる損害・損失に対する責任は一切負いません。体調に異変を感じた際には、当ブログの情報のみで自己判断せず、必ず医療機関を受診してください。

ここ数十年で気が付いてみれば2人に1人が一生に一度はがんに罹り、3人に1人ががんで亡くなる時代となってしまいました。漢方薬局の店頭でもがんのご相談をお受けする機会が以前よりも多くなっているように感じています。取り分け今回のブログテーマであります「大腸がん」はこの20年で約4倍にもなっているとのデータもあります。このブログが大腸がんを患っている方やご家族の有益な情報となり、助けとなることを期待いたします。

  1. 大腸がんの基礎知識
  2. 大腸がんの発生の仕方
  3. 大腸がんの症状
  4. 大腸がんの原因
  5. 日常生活への影響
  6. 大腸がんの治療法
  7. 東洋医学における大腸がんの考え方
  8. どんな漢方薬が処方されるか
  9. 漢方薬を購入するには?
  10. 漢方薬局に相談するときのポイント
  11. よくある質問

1.大腸がんの基礎知識

1-1.大腸がんは年々増え続けている

がんによる死亡者数は年間30万人以上になり、それは他の心疾患や肺炎、脳血管疾患と比べて群を抜いて多くなっています。取り分け増え続けているがんとして注目されているのが「肺がん」と「大腸がん」です。男性の場合は胃がん、肺がんに次いで3位で、女性の場合はがん死亡の1位となっています。

1-2.女性は結腸がんが多い

ご承知のように大腸は小腸に続く消化管で2メートルほどあり、盲腸、上行結腸から直腸を経て肛門に至ります。最初液状の内容物は徐々に水分が吸収されて固形状となり不要な老廃物として排出されます。大腸がんの部位としては直腸がんが一番多く次に多いのがS状結腸がんで、この二つを合わせると6割を占めます。両者は肛門に近い部分ですので便の表面に血が付いたり、下血や便が細くなったり、残便感、肛門痛などを感じるケースがあります。また女性の場合は結腸がんが急増しており、男性とは少し違う傾向にあります。

1-3.生存率は胃がんを上回る

先ほど増え続けている大腸がん、そして女性のがんによる死亡のトップが大腸がんという事に触れましたが、早期に発見し早期治療をすればほぼ完治するがんでもあります。全国がんセンター協議会の「生存率協同調査」によるとがんと診断されて5年経過後生存している患者さんの割合を各がんで比較してみると結腸がんは74.6%、直腸がんは73.7%と他の部位よりも高値となっていることがわかります。とは言いましても大腸がんは他のがんに比べ、ある程度進行しなければ自覚症状がなく見過ごされやすいがんだと言われています。一般に市町村の定期検診の中の便潜血検査で異常を指摘され、詳しく調べて大腸がんであることがわかることが多くありますので、日頃より油断せずに検診されますことをお勧めいたします。

2.大腸がんの発生の仕方

2-1.ポリープから大腸がん

大腸内視鏡で確認してみると「ポリープがあったので取っておきました」などと聞いたことがあるかもしれません。ポリープそのものは粘膜の表面にできたイボのようなものでがんではありませんが、将来がんになる可能性のあるポリープもあり、それを腺腫と言っています。

2-2.正常粘膜から大腸がん

大腸がんの発生にはポリープからがん化するパターンともう一つ粘膜に直接がん細胞が発生(*デノボ)するパターンがあります。ポリープは粘膜の表面に隆起しますが、そうでないがん細胞は隆起しなかったり、逆に凹んでいるものもあり発見しにくいことがあります。*デノボ(de novo)とはラテン語で「新たに」の意味になります。

※大腸がんの病期(ステージ)

他のがんの場合と同様にTNM分類によりがんの進行度を病期(ステージ)で表します。

  • ステージ0期・・・一番内側の粘膜中に止まっている状態
  • ステージⅠ期・・・筋層内に止まっている
  • ステージⅡ期・・・筋層を破ってはいるが、リンパ節転移はない
  • ステージⅢ期・・・リンパ節への転移が3個以下はⅢa、4個以上がⅢb
  • ステージⅣ期・・・腹膜や肝臓、肺などへ遠隔転移している状態

癌細胞の大きさ・・・T(tumor)、リンパ節への転移・・・N(node)、遠隔転移の有無・・・M(metastasis)で病期を分類します。

3.大腸がんの症状 

3-1.血便

大腸がんからの出血により血便、下血が起こります。がんの部位により血液の色や状態が変わり、比較的肛門に近い場合は鮮血に近く目でも確認できますが、小腸に近い部位の大腸がんの場合は目では確認が難しくなります。

3-2.下痢や便秘

今までは快便な方でも大腸がんになると下痢や便秘または下痢と便秘を交互に繰り返したり、便通が変わる場合があります。
残便感・・・大腸がんが便通を邪魔してしまい細い便が続く場合があります。またスッキリと便が出なかったり、腹痛やお腹が張った感じ(腹部膨満感)がするなどの自覚症状が挙げられます。

4.大腸がんの原因

大腸がんの原因として確定的なことはわかっていませんが、発症の確率を高めるものとして以下が挙げられます。

4-1.食生活の欧米化

牛や豚の赤身、ハムやソーセージなどの過剰摂取そして野菜不足が以前より指摘されています。過剰な脂肪を分解するのに胆汁がたくさん分泌されますが、その成分が腸内細菌により分解され、発がん物質を発生させているのではと考えられています。また野菜に含まれる食物繊維は有害物質を排出してくれるので野菜不足は大腸がんのリスクを高めます。

4-3.肥満、喫煙、飲酒、年齢

肥満は循環器系疾患などのリスク要因であるだけでなく、大腸がんの危険要因であるとのデータがあります。特に男性の場合BMIが27以上になると明らかにリスクが高くなります。他に喫煙、飲酒、年齢も含め危険要因として考えられています。

5.日常生活への影響

手術後にストーマ(人工肛門)装着となった場合・・・直腸がんの手術をされ、ストーマを装着することによる生活への影響を懸念される方がいらっしゃいますが、慣れてくればほとんどの場合において影響がありません。

6.大腸がんの治療法

6-1.手術療法

身体から大腸がんを取り去るのが治療の基本になります。腹腔鏡手術と開腹手術があり、がんの出来ている部位やステージにより切除範囲や手術法が異なります。担当医にご相談ください。

6-2.内視鏡治療

ステージが0期もしくはⅠ期で選択されるのが内視鏡治療です。病変の形により内視鏡的ポリペクトミー、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などがあります。

6-3.放射線治療

X線を患部に当てて、がん細胞を破壊し増殖を抑えます。手術前にがん細胞を抑えたり、手術後の再発防止のために放射線を当てることもあります。

6-4.抗がん剤治療

がんの進行を抑えたり、再発率を低下させる目的で医師より処方されます。抗がん剤により食欲不振や倦怠感、脱毛、白血球の減少、肝機能障害など様々な副作用が出る場合があります。
※内容に合わせて数を調整してください。

7.東洋医学における大腸がんの考え方

7-1.扶正去邪(ふせいきょじゃ)

私たちには普段よりからだの内外の変化に上手く対応しようと恒常性維持機能つまりバランス力が備わっています。また外から侵入するウイルスや悪いものに負けないように免疫機能も備わっています。東洋医学ではそれを「正気」と言っています。ところが何らかの原因によりこれらの機能が低下したり、バランスを崩すと正気が不足し、「邪気」つまりウイルスや悪いものに負かされてしまうと考えるのです。ですから大腸がんだけでなく様々な症状に対して漢方薬は不足した正気を補うことにより邪気を追い出す去邪、つまり病気や症状を治すことにつながると考えるのです。

7-2.病院の治療での副作用軽減

上記に示した手術や放射線、抗がん剤による大腸がんの治療においては様々な副作用が予測されます。食欲の低下、からだのだるさ、下痢、出血などに対して漢方薬で改善の可能性がありますので是非お勧めいたします。

7-3.緩和ケア

昨今緩和ケアと言うことばは広く認知されるようになりました。がん患者さんの肉体的な痛み、そして不安や落ち込み、不眠など精神的なストレスには計り知れないものがあります。そのような様々な痛みの緩和を目的になされるのが緩和ケアです。元々漢方医学は「心身一如」と言って、からだとこころは一体と考えることからも、緩和ケアに漢方薬が広く用いられるのは極自然なことです。

7-4.術後の回復と再発防止のために

術後の回復を助けるのは化学薬品ではなく、ご自身のからだです。漢方薬は補う力に長けておりその意味で回復を早めたり予防にもつながると考えます。

以上の状況で漢方薬をお求めになる方がおられます。がんの標準治療において漢方薬はあくまでも補う(補完医療)ものであり、がん治療の中心にはなりませんが、回復を助けたり不快な副作用を抑えることも可能です。お悩みの方はご相談ください。

8.どんな漢方薬が処方されるか

大腸がんだけでなく他のがんも同様に状態により様々な漢方薬が考えられます。 

8-1.清熱化痰(せいねつけたん)・・・内熱を取り、利水を促す

補気建中湯(ほきけんちゅうとう)・・・人参、白朮(びゃくじゅつ)、蒼朮(そうじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、沢瀉(たくしゃ)、黄芩(おうごん)、陳皮(ちんぴ)、厚朴(こうぼく)、麦門冬(ばくもんどう)以上9種類の生薬からなる処方です。茯苓、白朮、蒼朮、沢瀉は浮腫みや腹水などに利水の働きがあります。また黄芩は炎症による内熱を去り人参で体力を補います。

 8-2.行気活血(こうきかっけつ)・・・気と血の巡りを良くする

芎帰調血飲第一加減 (きゅうきちょうけついんだいいちかげん)・・・当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、地黄(じおう)、芍薬(しゃくやく)、牡丹皮(ぼたんぴ)、茯苓(ぶくりょう)、白朮(びゃくじゅつ)、桃仁(とうにん)、紅花(こうか)、烏薬(うやく)、香附子(こうぶし)、木香(もっこう)、益母草(やくもそう)、牛膝(ごしつ)、延胡索(えんごさく)、陳皮(ちんぴ)、枳実(きじつ)、甘草(かんぞう)、大棗(たいそう)、桂皮(けいひ)、乾姜(かんきょう) 以上21種類の生薬を含む処方です。芎帰調血飲に気血の巡りをさらに良くする生薬を加味しており桃紅四物湯が基本処方とも言えます。

 8-3.益気養陰(えっきよういん)・・・からだを潤し、気を益す

生脈散(しょうみゃくさん)・・・麦門冬(ばくもんどう)、五味子(ごみし)、人参の3味からなるシンプルな処方です。脈を生むという処方名からも分かるように、病気やその治療で消耗したからだを元気にします。 

9.漢方薬を購入するには?

9-1.手術をした病院で漢方薬を処方してもらう

保険適応の医薬品は化学薬品だけではありません。漢方薬もツムラ、クラシエなど各社あり必要に応じて漢方薬も処方されています。あくまでも保険適応の範囲内ではありますが、状況を理解した医師による処方なので安心してお飲み頂けます。

9-2.漢方薬局など漢方の専門家に相談する

今は漢方薬を専門に取り扱う漢方薬局もあり、漢方薬のスペシャリストがお客様の症状や体質など判断して漢方薬を提供してくれます。病院では相談しにくいことも気軽に相談に乗ってくれますので是非ご料ください。

9-3.通販サイトやドラッグストアーで購入する

時間の都合や地域柄、近所に漢方薬局がない場合はドラッグストアーやインターネットでも購入することが可能です。

10.漢方薬局に相談するときのポイント

10-1.大腸がんの状態と体調、体質

漢方薬局ではお一人一人の病状や体質、薬の服用歴、食事や運動など生活のご様子も含めカルテに記録し、いつでも状態に合った漢方薬と情報を提供できるように努めています。かかりつけの漢方薬局を是非お勧めいたします。

 10-2.病院での治療の経過

十字屋平蔵薬局では病院での検査や治療についても承知しております。病院では聞きにくいことも気軽にお尋ねください。

10-3.大切なこころのケアやアフターフォロー

今はがんであることを患者さんに告知される時代です。当店ではただ単に漢方薬をお買いいただくだけでなく、出来るだけ安心していただけるように努めています。それがじっくり相談できる漢方薬局の役割だと考えています。

 11.よくある質問

Q.漢方薬で大腸がんは治りますか?
A.残念ながら漢方薬で大腸がんが治るとは言えませんが、治療中のQOL改善や治療後の回復を助けるのには有用ですので是非お勧めいたします。

Q.手術後の食事はどのようにしたら良いのでしょうか?
A.術後一般的には消化管に負担にならないように、重湯から3分粥、5分粥、7分粥、全粥とお米の比率を徐々に上げていきます。また食事量も二か月位は通常の7割くらい(腹七分)に抑えます。また最近では安全にしかも早期に回復を目標とするERAS(Enhanced Recovery After Surgery)と言う治療計画が提唱されています。大腸がんは食習慣との関係性も指摘されている病ですので食事指導は特に大切なポイントです。

Q.お勧めのサプリメントや健康補助食品もありますか?
A.ご来店のお客様からも漢方薬以外にサプリメントについてのご相談を受けることもあります。当店では必要に応じて漢方薬だけでなくサプリメントもお勧めすることがあります。

Q.抗がん剤と漢方薬は併用できますか?
A.基本的に同時並行で進めることは可能ですが、個々の状況によっては好ましくない場合もありますので専門家にご相談ください。

まとめ

今回のブログテーマは「大腸がんと漢方薬」についてでしたがいかがだったでしょうか。患者数が増加傾向にある大腸がんですが、早期発見によってほぼ完治が可能ながんでもあります。ですからがん検診を積極的に受けることが大切です。大腸がんと診断された方、また治療後の方などにとって、このブログが予後の助けとなることを期待いたします。

十字屋平蔵薬局 店主 富居 博典

監修者

富居 博典
十字屋平蔵薬局 店主

所属研究会・勉強会
東洋漢方研究会/伝統漢方研究会緑健会日本中医薬研究会

東京薬科大学卒業後、総合病院・調剤薬局での実務経験を経て、漢方専門薬局『十字屋平蔵薬局』を開業。

漢方薬だけでなく病気や症状・治療薬・医療全般についても精通しており、一人一人の治療経過や薬歴を踏まえた提案・養生指導が好評を得ている。地域情報誌にて健康コラム『平蔵の漢方相談』を連載。15年以上続く長寿コーナーとなっており、長きにわたって地元の人々に親しまれている。


十字屋平蔵薬局