がんの治療に漢方は効くのか? 取り入れ方や役割について

十字屋平蔵薬局 薬剤師 富居博典

記事監修
十字屋平蔵薬局 店長・薬剤師 富居博典
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漢方におけるがん治療についてご存じでしょうか? 今や日本人の4~2人に1人ががんになるといわれている時代です。非常に身近な病気となり、その治療法についてもさまざまな研究が続けられています。漢方治療もその1つであり、がんの治療として漢方を取り入れている病院も少なくないのが現状です。果たして漢方は、がんの治療にどのような役割を果たしているのでしょうか。

この記事では、がん治療における漢方の役割や用いられる漢方薬についてご紹介します。

  1. がんの基礎知識
  2. がんと漢方について
  3. がんに用いられる漢方薬
  4. 漢方薬の購入方法・飲み方
  5. 漢方によるがん治療に関するよくある質問

この記事を読むことで、がん治療と漢方の関係について分かるはずです。がんという病と向き合う上で、ぜひ参考にしてください。

1.がんの基礎知識

まずは、がんについて解説します。最近の傾向や主な治療法にはどのようなものがあるのでしょうか。

1-1.がんとは?

がんとは、人間の体に存在する細胞のうち、「正常ではない状態の細胞」の塊をいいます。私たちの体は約60兆個の細胞からできており、何らかのダメージを受けた細胞ががん細胞に変化することがあるのです。できてしまったがん細胞は時間をかけて増殖し、正常な細胞から栄養を奪って成長します。その結果、体は衰弱し、放っておくと生命の維持が困難な状態になってしまうのです。

1-2.最近の傾向

がんの罹患(りかん)数は年々増加傾向にあります。現在、1年間でがんにかかる人の数は約100万人といわれており、大腸がんに次いで肺がん、胃がん、前立腺がん、乳がんの順に多いのが現状です。年代別に見ると、40歳代から患者数が増加し始め、高齢になるにつれて多くなります。同時にがんによる死亡率も年々増加しており、30年以上連続で日本人の死因のトップを占めているのががんです。

1-3.主な治療法

がんの治療法は主に3つあります。進行の度合いや患者の年齢、性別なども考慮して総合的に判断し、どの治療が最適かが決められることになるでしょう。

1-3-1.手術療法

体にメスを入れ、がん化している部分を切除する方法です。最近は内視鏡を使った手術など、患者の負担を少なくする方法も検討されることが多くなりました。切除可能な状態であれば、転移している周辺組織やリンパ節なども一緒に切り取ることができるため、治癒率は高くなるでしょう。

1-3-2.化学療法

点滴や注射、内服による抗がん剤の使用でがん細胞を死滅させる治療法です。体にメスを入れる必要はありませんが、健康な細胞にも悪影響を与えるため、副作用が現れる可能性は高くなります。また、がんの種類によっては効果が現れにくい場合もあるでしょう。

1-3-3.放射線療法

病巣部に放射線を照射することでがん細胞を死滅させます。注射や内服で放射線物質を投与する方法もあり、正常組織へのダメージを抑えられる治療法です。転移による痛みの緩和を目的として行われる場合もあります。

2.がんと漢方について

近年注目を集めている漢方によるがん治療についてご紹介しましょう。

2-1.漢方におけるがんの考え方とは?

漢方医学では基本的に、病気は「気・血・水」の異常によって起こるものと考えられています。

  • 気:人間を生かしているエネルギー
  • 血:血液とその中に含まれる栄養素
  • 水:リンパ液や汗など、血液以外の体液

この3つが全身をめぐり、バランスが保たれている状態で健康が維持できるのです。3つのうちの1つが不足したりめぐりが悪くなったりすると、人間が本来持つ自然治癒力や免疫力が低下し、がんのような病気になりやすくなります。

2-2.漢方でがんは治るのか?

漢方薬でがん細胞を完全に死滅させることができるというデータはありません。がん治療における漢方の役割は、体力の維持や向上、副作用の軽減をはかり、がんがあっても自分らしい生活を送ることができるようにすることです。西洋医学はがんを直接治療しますが、漢方は体全体のバランスを整えることでアプローチします。

2-3.漢方の取り入れ方

手術や放射線・抗がん剤などによる治療でダメージを受けた体に対して、漢方薬を使って体力の回復を目指す場合もあります。心と体のバランスを整えることで痛みや副作用を軽減するために漢方薬が用いられることもあるでしょう。このように、がん治療の手助けとして漢方を取り入れることになります。

3.がんに用いられる漢方薬

がん治療に用いられる漢方薬やその効果についてまとめました。

3-1.どんな漢方薬、生薬があるのか?

がん治療に用いられる漢方薬や生薬についてご紹介します。

3-1-1.漢方薬

  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう):胃腸の働きを高め、免疫力を上げる
  • 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう):治療による精神不安の改善
  • 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう):抗がん剤や放射線療法の副作用を軽減
  • 人参養栄湯(にんじんようえいとう):栄養状態を改善する
  • 清暑益気湯(せいしょえっきとう):体力低下、食欲不振、全身倦怠(けんたい)感の軽減

3-1-2.生薬

  • 人参(にんじん)・黄耆(おうぎ):胃腸の調子を整えて元気をつける
  • 当帰(とうき)・芍薬(しゃくやく):栄養状態をよくして抵抗力を高める
  • 麦門冬(ばくもんどう)・天門冬(てんもんどう):体の潤いを増す
  • 陳皮(ちんぴ)・香附子(こうぶし):体の機能の停滞を改善する
  • 桃仁(とうにん)・牡丹皮(ぼたんぴ):組織の血液循環をよくする
  • 猪苓(ちょれい)・沢瀉(たくしゃ):体の代謝をよくする
  • 附子(ぶし)・桂皮(けいひ):体を温めて新陳代謝を高める
  • 黄連(おうれん)・山梔子(さんしし):炎症を抑えて解毒機能を補助する

3-2.効果について

前述したとおり、漢方薬でがんを治すことができるという科学的根拠は証明されていません。「がんを治療する」という意味で漢方薬の効果を期待するのはやめたほうがよいでしょう。漢方薬は、治療というよりも体の状況をよくしていくためのサポートとして用いることを考える必要があります。

3-3.注意点

漢方薬は一人一人の体質や体調によって適したものを選ぶ必要があります。そのため、「がん治療に用いられる」といわれている漢方薬なら何でもよいというわけではないのです。自己判断はせず、がん治療でかかっている病院の医師や漢方に詳しい薬剤師などとよく相談した上で、自分に合った漢方薬を選ぶようにしてください。

4.漢方薬の購入方法・飲み方

漢方薬の購入方法や正しい飲み方についてご紹介します。

4-1.漢方薬局の選び方

漢方薬は、漢方専門の薬局で処方してもらうことができます。最近は漢方薬局も増えてきているため、選び方のポイントをご紹介しましょう。

  • 豊富な実績がある
  • 漢方専門医やアドバイザーが常駐している
  • 料金体系が分かりやすい
  • 利用しやすい

4-2.注意点

「漢方薬には副作用がない」と思っている人も多いでしょう。確かに、西洋薬に比べると副作用の心配は少ないと思います。しかし、体質に合わない漢方薬を飲んだり用法・用量を守らなかったりした場合は、副作用が出ることもあるのです。漢方薬剤師の指示に従い、正しく服用してください。

5.漢方によるがん治療に関するよくある質問

「漢方を使ったがん治療について知りたい」という人が感じる疑問とその回答をまとめました。

Q.がんになる原因にはどのようなものが考えられますか?
A.原因については不明確な点が多いのが現状です。しかし、リスク要因として考えられるものには、有害物質や放射線・紫外線・ウイルス・食事・添加物などがあります。

Q.なぜ年齢が上がるほどがんにかかりやすくなるのですか?
A.加齢によって免疫機能の働きが低下することが大きな原因でしょう。免疫力を高める生活習慣を心がけることで加齢に伴うがんの発症率を抑えることができるはずです。

Q.漢方薬にはどのようなメリットがありますか?
A.西洋薬に比べて副作用のリスクが低いこと、飲み続けることで体質改善が期待できることなどです。

Q.漢方薬の副作用として多いものにはどのようなものがありますか?
A.漢方薬を構成している生薬によって異なりますが、血圧上昇や動悸(どうき)・発汗・食欲不振などの症状が副作用として多いでしょう。

Q.漢方薬はいつ飲めばよいのですか?
A.基本的には、食前や食間の空腹時に服用するのが望ましいでしょう。胃の中が酸性の状態になっているため、吸収が速くなります。

まとめ

漢方によるがん治療について詳しくご紹介しました。漢方薬はがんの治療をサポートする役割を持ち、がんを予防する上でも非常に重要な働きをすることが分かっています。どのように漢方を取り入れていくべきか、ぜひこの記事を参考にして考えてみてください。

十字屋平蔵薬局 店主 富居 博典

監修者

富居 博典
十字屋平蔵薬局 店主

所属研究会・勉強会
東洋漢方研究会/伝統漢方研究会緑健会日本中医薬研究会

東京薬科大学卒業後、総合病院・調剤薬局での実務経験を経て、漢方専門薬局『十字屋平蔵薬局』を開業。

漢方薬だけでなく病気や症状・治療薬・医療全般についても精通しており、一人一人の治療経過や薬歴を踏まえた提案・養生指導が好評を得ている。地域情報誌にて健康コラム『平蔵の漢方相談』を連載。15年以上続く長寿コーナーとなっており、長きにわたって地元の人々に親しまれている。


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