不妊治療になくてはならない補中益気湯とは? その用法と効果

十字屋平蔵薬局 薬剤師 富居博典

記事監修
十字屋平蔵薬局 店長・薬剤師 富居博典
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こんにちは十字屋平蔵薬局の富居です。いつもブログをお読み頂いてありがとうございます。今回は漢方薬の中でも補剤の代表格であります補中益気湯と不妊治療についてのブログです。ご承知のように日本人の初婚年齢は年々上昇の一途をたどっており、今後妊娠率のさらなる低下が心配です。男性の初婚年齢はまだまだ若いとは言え、仕事や家庭などでストレスや疲れを感じていらっしゃる方がたくさんおられます。平均寿命も伸びているとは言え、からだの老化は否めません。元気のない方にこそ漢方薬は強い味方です。妊活中で結果が出ないでお悩みの方に是非お読みいただきたいと思います。

  1. 補中益気湯について
  2. 補中益気湯と不妊について
  3. 補中益気湯を飲む
  4. 補中益気湯に関するよくある質問
  5. まとめ

1.補中益気湯について

1-1.補中益気湯とはどんな薬?

最近では漢方薬が多くの方に認知されるようになりました。補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は中国金王朝の時代(西暦1115年~1234年)に金元四大家の一人である李東垣(りとうえん)によって開発された処方です。「内外傷弁惑論」と「脾胃論」に収載されており、医王湯とも言われています。

*金元四大家とは・・・・中国金王朝、元王朝時代に活躍した東洋医学の大家です。李東垣(りとうえん)以外に劉完素(りゅうかんそ)、張従正(ちょうじゅうせい)、朱丹渓(しゅたんけい)の名が挙げられます。中国のみならず日本の医療にも大きな影響を与えました。

補中益気湯と言う処方名からもわかるように“中を補い、気を益す”漢方薬で、補剤の雄とも言うべき処方です。中と言うのは内臓一般と言うよりは消化器系統を意味します。李東垣自身体力がなくまた当時蒙古軍の襲来もあり多くの兵士が病に倒れる、そのような時代背景が処方完成の裏にあったと言われています。

1-2.配合生薬

人参(ニンジン)4.0g、白朮(ビャクジュツ)4.0g、黄耆(オウギ)4.0g、当帰(トウキ)3.0g、陳皮(チンピ)2.0g、大棗(タイソウ)2.0g、柴胡(サイコ)1.0g、甘草(カンゾウ)1.5g、生姜(ショウキョウ)0.5g、升麻(ショウマ)0.5g以上の10種類の生薬から構成されています。

  • 人参・・・チョウセンニンジンの根、甘温微苦、強壮、健胃、滋潤
  • 白朮・・・オケラの根茎、甘苦温、健胃、利尿
  • 黄耆・・・マメ科キバナオウギの根、甘温、利尿、強壮、止汗
  • 当帰・・・トウキの根、甘温、駆瘀血、鎮痛、鎮静、補血、強壮
  • 陳皮・・・ウンシュウミカンの果皮、辛温、健胃、利尿、鎮咳、鎮吐
  • 大棗・・・ナツメの果実、甘温、緩和、強壮、利尿
  • 柴胡・・・ミシマサイコの根、苦微寒、解熱、鎮痛、強壮
  • 甘草・・・カンゾウの根、甘平、緩和、鎮痛、矯味
  • 生姜・・・ショウガの根茎、辛温、健胃、矯味
  • 升麻・・・サラシナショウマの根茎、苦寒、発汗、解熱、解毒

*補中益気湯に五味子(ゴミシ)、麦門冬(バクモンドウ)を加えると味麦益気湯(みばくえっきとう)になります。

*補中益気湯に赤石脂(しゃくせきし)を加えると赤石脂湯(春林赤石脂湯)と言う処方になり、脱肛や子宮下垂の適応になります。

*補中益気湯より当帰(トウキ)、白朮(ビヤクジュツ)を除き木香(モッコウ)、蒼朮(ソウジュツ)を加えることにより調中益気湯と名付けらます。

*類似処方に清暑益気湯がありますが、大棗、柴胡、升麻、生姜を取り去り麦門冬(バクモンドウ)、黄柏(オウバク)、五味子(ゴミシ)を加え清熱と滋潤の作用が特徴となります。

1-3.どのような症状・体質に効果が期待できる?

現代医学では胃腸は卵巣や子宮また精巣などの生殖器、腎臓、副腎やホルモンなどと直接の関係はありませんが、東洋医学では「脾は運化を司り、腎精を補充する」と言われます。胃腸がしっかりとしていなければホルモンも生理もないと言うことです。上記にもあるように補中益気湯には人参と黄耆を含んでおり両者を含む漢方製剤を参耆剤(じんぎざい)と言っており補の力が強く、適応されるタイプは疲れやすく、食欲も減退していることが多くあります。服用後胃腸の働きが整えば体力もしっかりとして気持ちも前向きになるものです。しかし中には精神的ストレスが原因で食欲が減退するケースもあり、その場合は補中益気湯ではなく他の薬方で精神的なケアが欠かせません。

2.補中益気湯と不妊について

2-1.補中益気湯が不妊に働くメカニズム

脾胃(胃腸)は後天の本(もと)・・・東洋医学では生まれながらに与えられた生命エネルギーのことを先天の本(ほん)と言っており腎(東洋医学の臓腑)に蓄えられていると考えます。また生後そのエネルギーは胃腸の消化吸収によって補充されますので、この胃腸の事を後天の本(ほん)と言っています。もちろん心臓や肝臓などの臓器の助けがあってこそですが、胃腸を通して気血がつくられ生命誕生のエネルギーが湧いてくるのです。

2-1-1.女性の場合

補中益気湯をお飲み頂く方は性別そして年齢を問わずに虚弱で手足に倦怠感を感じており、眼や言葉に力がなく、寝汗を訴える場合もあります。特に胃腸の働きが弱い特徴があります。また不妊症において言えば基礎体温表(BBT)で低温期から高温期への上昇に時間がかかる場合、補中益気湯が良い場合があります。おそらく卵管の蠕動(繊毛)運動が良くなるのではと思われます。さらには卵管采での卵子のピックアップにも良いケースもあります。

2-1-2.男性の場合

精液を検査してみると精子の運動率が悪い(精子無力症)、精子の数が少ない(乏精子症)ことがあります。女性同様に体質的な脾虚がある場合は適応になるケースがあります。また男性不妊の原因の一つに精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)があります。静脈血の末端から心臓への戻りが悪いために精巣静脈に瘤を形成してしまう疾患です。程度によりますが場合によっては他の薬方と組み合わせて補中益気湯も用いて良い場合があります。

2-2.どんな人、夫婦に向いているか

これまで記しましたように基本的に脾虚がベースにある場合は良いと思います。直接妊娠の成功率が上がるというよりも、からだを元気にして将来の妊娠に備える考え方が良いと思います。からだが元気でなければ妊活も始まりません。また先にも記しましたように胃腸は「後天の本(もと)」と言われ腎の力を補うものです。胃腸などの疲れを感じているご夫婦には是非お勧めしたい漢方薬の一つです。

3.補中益気湯を飲む

3-1.どこで手に入る?

主に病院か薬局で入手できます。ただ妊活に用いる漢方薬は補中益気湯だけでなく、多岐にわたっています。補中益気湯単独のケースはどちらかと言えば少ないと思います。信頼できる医療機関において体質全般について、さらに可能であればご夫妻でアドバイスして頂けるところが良いと思います。

3-1-1.病院でもらう場合

病院で医師が処方してくれると思います。おそらくツムラやクラシエ、三和、コタロの補中益気湯になると思われます。内科や婦人科で主に処方されている製剤です。かかりつけの医師にご相談ください。

3-1-2.漢方薬局でもらう場合

直接漢方薬局の担当薬剤師にご相談ください。漢方薬局ではあればいつも在庫しているはずです。十字屋平蔵薬局ではエキス製剤に加えて煎じ薬も調合しております。当店の所在地は西東京市のひばりが丘北で、西東京市はもとより新座市、東久留米市、練馬区を中心に西武池袋線沿線各所よりご来店頂いております。ひばりヶ丘駅北口からは徒歩1〜2分程の近距離です。是非ご利用ください。

3-2.飲み方

通常は1日3回でお飲み頂きます。ご自身で勝手に飲み方を調節するのではなく、処方された医師もしくはご相談している漢方薬局の指示に従いご継続ください。また併用薬などについては直接医療機関に伺ってください。

3-3.注意点

漢方薬は自然の生薬を組み合わせたものです。自然だからと言って副作用がゼロというわけではありません。一般的には胃の不快感、食欲不振、軽い吐き気、下痢、発疹、発赤、かゆみが出ることが希にあります。前述しましたように補中益気湯は虚証に用いる薬方ですので、体質的に実証の方がお飲みになった場合にトラブルになることはほとんどありません。逆に実証に用いる漢方薬を虚証に用いる場合は副作用を起こす頻度は多いと思います。ですから単に効能効果だけで判断するのではなく体質なども考慮してお飲み頂くことをお勧めいたします。

4.補中益気湯に関するよくある質問

Q.補中益気湯と十全大補湯は違いますか?
A.両者ともに人参剤で虚証の状態にもちいられる漢方薬ですが、補中益気湯は胃腸の虚弱による体力低下です。一方十全大補湯は血虚による虚証状態です。

Q.補中益気湯のエキス剤は一種類ですか?
A.ツムラだけでなく小太郎漢方、三和生薬、クラシエ、東洋薬行、JPS、太虎精堂製薬、大杉製薬などがあります。また一般用でも松浦漢方や一元製薬、ロート製薬など各メーカーから販売されています。

Q.補中益気湯だけで妊娠しますか?
A.男性、女性ともに処方を複数組み合わせてお飲み頂くケースが当店では多くあります。もちろん不妊症の方で補中益気湯だけでの場合もあります。

Q.副作用はありますか?
A.はい、あります。胃の不快感、食欲不振、軽い吐き気、下痢、発疹、発赤、かゆみなど、他にはだるい、血圧上昇、むくみ、体重増加、手足のしびれ・痛み、筋肉のぴくつき・ふるえなど商品の添付文章でご確認ください。一般的には虚証の漢方薬ですのであまり副作用の頻度は多くありません。但し漢方生薬のなかで甘草の重複により高血圧、浮腫みを起こす偽アルドステロン症を起こす場合がありますので他の漢方薬などとの併用において注意が必要です。

Q.不妊症で飲む場合とそうでない場合ではどちらが多いでしょうか?
A.補中益気湯は不妊症の方に多く服用されているわけではありません。どちらかと言えば胃腸が弱い方、呼吸器の弱い方に多く用いられています。他には皮膚疾患や精神的な症状、耳鼻科疾患、がん疾患の方などです。

Q.体外受精を考えていますが漢方薬も併用できますか?
A.もちろん併用が可能です。病院の不妊治療と漢方薬はまったく治療のアプローチが違います。むしろ両者を一緒に組み合わせることによってより良い結果が得られると思います。さらに亜鉛やマカ、ビタミン剤などのサプリメントも併用しているケースも多くあります。

5.まとめ

いかがだったでしょうか? 今回は不妊症と補中益気湯を中心にブログを書いてみました。漢方薬は体質によって効果があるないなどの差が出てきます。精子の運動率が悪いから補中益気湯という考え方は本来ではありませんが、無作為な臨床データで改善が確認されています。また、子宝の願いを叶えるには様々な要素をクリアしなければなりません。お悩みの方は是非ご来店ご相談ください。あなたに合った漢方薬でご希望が叶えられることを祈ります。

十字屋平蔵薬局 店主 富居 博典

監修者

富居 博典
十字屋平蔵薬局 店主

所属研究会・勉強会
東洋漢方研究会/伝統漢方研究会緑健会日本中医薬研究会

東京薬科大学卒業後、総合病院・調剤薬局での実務経験を経て、漢方専門薬局『十字屋平蔵薬局』を開業。

漢方薬だけでなく病気や症状・治療薬・医療全般についても精通しており、一人一人の治療経過や薬歴を踏まえた提案・養生指導が好評を得ている。地域情報誌にて健康コラム『平蔵の漢方相談』を連載。15年以上続く長寿コーナーとなっており、長きにわたって地元の人々に親しまれている。


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