漢方薬の飲み合わせ、副作用に関する素朴な疑問

十字屋平蔵薬局 薬剤師 富居博典

記事監修
十字屋平蔵薬局 店長・薬剤師 富居博典
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様々な症状を併発している患者さんの中には複数の西洋薬と一緒に漢方薬をしかも二種類、三種類と併用して服用する場合が少なくありません。そう言った場合患者さんの心配は「こんなに薬をたくさん飲んで、お薬同志作用がぶつかるのではないか?」あるいは「症状を解消するために飲んでいるお薬が逆に悪い反応が出るのでは?」となります。もっともだと思います。必要以上に心配してはいけませんが、闇雲に「漢方薬」だから大丈夫ということではなく、正しい情報で漢方薬に対する正しい認識が大切です。

  1. 漢方薬の飲み合わせについて
  2. 漢方薬の飲み合わせ
  3. もし飲んでしまったときの対処法
  4. よくある質問

1.漢方薬の飲み合わせについて

1-1.効果の重複

ご来店のかたの中には漢方薬を二種類、三種類とすでに併用している方も珍しくはありません。しかしそれぞれの処方、商品の中には重複している生薬もあったりします。特に大黄(だいおう)・麻黄(まおう)・附子(ぶし)・甘草(かんぞう)・石膏(せっこう)などは当店でも重複しているかいないかはいつも念頭に置いてお勧めしています。

1-2.作用の相殺

漢方薬には方意と言って処方に方向性(ベクトル)のようなものがあります。例えば生薬で麻黄と石膏の組み合わせは汗を止め、それに桂枝を組み入れると作用が反転して発汗作用を示します。様々な処方を複数組み合わせることにより方意がずれることも考えられます。安易に症状だけで漢方薬を重ねて飲むことをせずに漢方薬の専門家にご相談ください。

1-3.証のずれ

1996年3月1日メディアで漢方薬による死亡事故の例として小柴胡湯が大きく取り上げられました。1994年以降88名の方が間質性肺炎になり10名が死亡したと言う内容です。当時慢性肝炎や肝硬変の患者さんの多くに小柴胡湯が処方されていました。適応症が一致しているというだけで体質や体力を無視してインターフェロンと併用して処方されていたとすれば何が起きても不思議ではありません。そもそも小柴胡湯は以下の7つの生薬から構成されている柴胡剤です。柴胡(さいこ)・黄ごん(おうごん)・半夏(はんげ)・人参(にんじん)・甘草(かんぞう)・生姜(しょうきょう)・大棗(たいそう)体質的には中間証で小陽病の状態に用いられる処方です。病名は一致していたとしても体質的な虚実にズレがあれば副作用発現の可能性が高まります。これは小柴胡湯だけのことではなく漢方薬一般に言えることです。

1-4.賦形剤や生薬に対するアレルギー 

エキス剤には均一な濃度や剤型を維持するために乳糖、乳糖水和物・トウモロコシデンプンなどの賦形剤が含まれています。まれにこの賦形剤に反応して下痢をしてしまう方がいます。メーカーによって賦形剤の種類や濃度は違いますので他メーカーで対応することをお勧めいたします。また処方によっては生薬そのものに反応してしまうケースもありますのでお気を付け下さい。例えば甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)は甘草・小麦・大棗の三つの生薬で構成されている処方ですが小麦アレルギーの方は証が合っていたとしても小麦アレルギーのアナフラキシーショックがおきることが考えられます。他の処方で対処するしかありません。あらかじめアレルギーのある方はご相談の中でおっしゃってください。

2.漢方薬の飲み合わせ

漢方薬は虚証の漢方薬と実証の漢方薬の組み合わせを含めて様々な可能性が考えられます。例えばある虚弱体質の方が胆嚢炎になったとします。胆嚢は激しい炎症をおこしているとすれば局部の状態に合わせた大柴胡湯が必要になることもあるでしょう。また打撲で患部を腫らしたとします。患部には桂枝茯苓丸や三黄瀉心湯が必要になるでしょう。その場合体質的に当帰芍薬散でありその併用が考えられます。それを漢方薬の成分だけで考えたり、全体的な陰陽虚実にあわせると矛盾が生じてしまいます。そこが漢方薬の難しいところなのだと思います。

2-1.甘草とグリチルリチン酸製剤

漢方処方の7割程の処方に含まれており処方構成上必要不可欠な生薬です。マメ科の多年草で天然の甘味料として世界的にお菓子(リコリス)や醤油など食品にも幅広く用いられています。甘草を含む製剤とグリチルリチン酸(商品名はグリチロン・強力ネオミノファーゲンシー)の併用です。グリチルリチン酸はそもそも甘草から抽出された製剤ですので過剰摂取による低カリウム血症になる可能性があるからです。低カリウム血症はカリウムが必要以上に排泄されてしまい、症状としては浮腫みや高血圧、筋肉のけいれんなどです。

2-2.ぜんそく治療薬、狭心症などの循環器系疾患と麻黄剤

喘息の治療薬には様々ありますが、テオフィリン製剤、β2刺激薬、抗コリン剤、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤などです。その中でもテオフィリン製剤、β2刺激薬、抗コリン剤は作用機序が違っていても気管支を拡張し気道を広げる働きは同じです。また心臓疾患などにより循環器系の薬をお飲みになっている患者さんが麻黄を含む漢方薬(麻杏甘石湯・麻黄湯・神秘湯・葛根湯・小青龍湯・葛根湯加川きゅう辛夷・五虎湯・五積散などの麻黄製剤)を服用した場合に動悸を感じたり血圧が上がるなどの副作用が発現する場合があります。麻黄にはエフェドリンを含んでおり交感神経を興奮させる働きがあるためです。ですから麻黄剤を複数併用する場合も含め注意が必要です。ご相談の際は常用しているお薬をお知らせください。

2-3.下剤と漢方薬

漢方処方には大黄や麻子仁、芒硝など便通を良くする生薬があります。重複している場合は下痢や腹痛として副作用が出る場合があります。例えば防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)は以下の生薬で構成されています。

防風(ボウフウ)・黄ごん(オウゴン)・大黄(ダイオウ)・芒硝(ボウショウ)・麻黄(マオウ)・石膏(セッコウ)・白朮(ビャクジュツ)・荊芥(ケイガイ)・連翹(レンギョウ)・桔梗(キキョウ)・山梔子(サンシシ)・芍薬(シャクヤク)・当帰(トウキ)・川きゅう(センキュウ)・薄荷(ハッカ)・滑石(カッセキ)・生姜(ショウキョウ)・甘草(カンゾウ) 

実証向きの漢方処方であるため虚弱体質である場合は胃腸の調子を崩したり、麻黄剤でもありますので心臓に負担が掛かることがあります。他にも大黄を含む処方には大柴胡湯・三黄瀉心湯・桃核承気湯・調胃承気湯・麻子仁丸・大甘丸・桂枝加芍薬大黄湯・乙字湯・茵陳蒿湯などがあります。

2-4.附子剤の併用

エキス剤で附子を含む処方は八味丸、牛車腎気丸、麻黄附子細辛湯、桂枝加朮附湯、葛根加朮附湯、真武湯などです。これらはからだを温めたり、痛みを取り除く散寒止痛(さんかんしつう)の働きがありなくてはならない処方です。附子はトリカブトを修治することにより毒を除きます。武士剤を併用する場合は附子の量が多くなっていないか注意が必要です。

2-5.その他の注意点

症状には合っていても体質にあっていなければ悪い反応が出ることがあります。例えばアトピー性皮膚炎で用いる白虎加人参湯は石膏を含む処方です。体質によってはお腹が冷えて下痢や便秘も考えられます。漢方薬をご購入いただく場合はあらかじめ相談員にお伝えくださり体質に配慮した漢方製剤をお飲み頂くことが大切です。

3.もし飲んでしまったときの対処法

漢方薬だから安心と言うわけではありません。普通の食品でもアレルギーでショック症状を起こすことを思うと漢方薬も素人判断は禁物です。

3-1.薬の服用を中止する

薬の服用を中止してください。漢方薬を併用していて副作用のような何かを感じた場合は処方された医療機関にご相談ください。基本的に飲み合わせが問題の場合は服薬を中止すれば副作用は徐々に消失していきます。

3-2.医師・薬剤師に相談する

医師もしくは薬局にご相談ください。できれば処方あるいは販売された医師、薬剤師に連絡してください。漢方薬局でも薬剤師であれば西洋薬の重複チェックは可能です。

4.よくある質問

他の薬やサプリメントとの併用について

しばしば患者様に受けるご質問の中に「西洋薬との併用 他の医療機関からの漢方薬の併用、漢方系健康食品、サプリメントの併用は大丈夫か?」と言う内容です。漢方薬は処方される医師や薬剤師により見立てが異なる場合がしばしばです。基本的に症状と体質的なものがマッチしていれば大丈夫だと考えます。漢方生薬を西洋薬のように成分としてバラバラして考えるのではなく、薬方が証に合っていれば基本的に大丈夫でしょう。漢方薬には方意と言って組み合わせによる方向性、ベクトルみたいなものがあるからです。詳しくは処方された先生にご確認ください。

副作用にはとのようなものがありますか?

吐き気・食欲不振・胃部不快感などの消化器症状や発疹・発赤・かゆみなどの皮膚症状・浮腫み・血圧上昇・尿量の減少・肝機能障害などです。

雑誌や漢方薬の本などの情報によると改善の前段階で瞑眩(めんげん)つまり好転反応あると書いてありますが本当はどうなのでしょうか?

確かに好転反応はありますが、それほど多く発現するものではありません。当店でも日常ほとんど経験しません。もし悪くなるとすれば合っていない可能性もありまえので、処方された医療機関にお尋ねください。

漢方薬をお酒で飲んでも大丈夫ですか?

こちらから指示のない限り漢方薬をはじめ他のお薬もお酒で飲まないでください。ただし漢方薬によってはアルコール成分を含有していたり、清酒で服用するものもあり、薬だから絶対にお酒で飲んではダメということではありません。

5.まとめ

いかがでしたでしょうか。漢方薬に関する併用薬に関する疑問は解消されたでしょうか。漢方薬を服用するにあたってより症状と体質に合った漢方薬をお飲み頂くには直接対面で漢方薬を処方して頂きご購入することをお勧めいたします。また医師や薬剤師など医療スタッフとのコミュニケーションが副作用をはじめ医療事故の防止にもなると考えます。お気軽にご相談ください。

十字屋平蔵薬局 店主 富居 博典

監修者

富居 博典
十字屋平蔵薬局 店主

所属研究会・勉強会
東洋漢方研究会/伝統漢方研究会緑健会日本中医薬研究会

東京薬科大学卒業後、総合病院・調剤薬局での実務経験を経て、漢方専門薬局『十字屋平蔵薬局』を開業。

漢方薬だけでなく病気や症状・治療薬・医療全般についても精通しており、一人一人の治療経過や薬歴を踏まえた提案・養生指導が好評を得ている。地域情報誌にて健康コラム『平蔵の漢方相談』を連載。15年以上続く長寿コーナーとなっており、長きにわたって地元の人々に親しまれている。


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