アレルギー性疾患の症状と体質の改善に注目される漢方薬

十字屋平蔵薬局 薬剤師 富居博典

記事監修
十字屋平蔵薬局 店長・薬剤師 富居博典
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この時期花粉症や喘息で悩まれる方が多くおられますが、季節風によるスギやヒノキの花粉、ほこり、PM2.5など吹き荒れます。また、普段の食生活にも添加物や環境ホルモンなどアレルギーの原因物質がいっぱいです。少しでも症状を軽減し安心して過ごされることを願うばかりです。以下にアレルギーの発症メカニズムと現代医学による対処法、東洋医学的考え方と具体的な漢方薬をご紹介いたします。

  1. アレルギーの基礎知識
  2. 漢方におけるアレルギーの考え方
  3. アレルギーに効果のある漢方薬
  4. アレルギー治療に漢方薬を取り入れるには
  5. よくある質問
  6. まとめ

1.アレルギーの基礎知識

一口にアレルギーと言っても、小麦やそば・卵などの食物アレルギーや気管支喘息・花粉症・アトピー性皮膚炎・金属アレルギーまたリウマチなどの免疫系疾患や円形脱毛症など様々なタイプがあります。一般的にはⅠ型アレルギーを狭義の意味でアレルギー疾患と言っており、ここでは主にⅠ型に分類される花粉症や気管支喘息、アトピー性皮膚炎(Ⅰ型とⅣ型)疾患のメカニズム、またその対処方法や体質との関係も含めてご解説いたします。

1-1.アレルギーについて

本来からだを守るはずの免疫システムが正常に機能しないと様々な症状に悩まされます。亢進していても、低下していてもダメなのです。花粉症などのアレルギー症状は過敏な亢進状態であり、免疫系疾患はさらに異常な亢進により自己細胞を攻撃していると言えます。アレルギー疾患は以下の4タイプに分類されます。

Ⅰ型アレルギー(即時型)

IgEという免疫グロブリンが肥満細胞(マスト細胞)とアレルギーの元となる抗原に結びつくことにより、結果的に肥満細胞からセロトニンやヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジンと言われる化学伝達物質(ケミカルメディエーター)が遊離します。これらが痒みなどの原因物質となります。抗原が体内に侵入してから10分前後から数時間以内に発症するため即時型アレルギーと言われています。具体的には花粉症や蕁麻疹・気管支喘息・アトピー性皮膚炎・アナフィラキシーショックや食品アレルギーなどです。

Ⅱ型アレルギー(細胞障害型)

IgG、IgMと言われる免疫グロブリン細胞が抗原である自己細胞に接着し攻撃するタイプです。具体的疾患としてはウイルス性肝炎や重症筋無力症・円形脱毛症・悪性貧血・橋本病・特発性血小板減少性紫斑病などです。

Ⅲ型アレルギー(免疫複合体型)

抗原と抗体そして補体が結合することにより免疫複合体を形成する特徴があります。疾患としては関節リウマチ・全身性エリテマトーデス(SLE)・シェーグレン症候群などです。

Ⅳ型アレルギー(遅延型)

T細胞が抗原と結びつくことにより発症します。遅延型アレルギーと言われます。アトピー性皮膚炎、シェーグレン症候群やギラバレー症候群がⅣ型に分類されます。Ⅰ型~Ⅲ型は抗体が関与する体液性免疫ですがⅣ型は抗体が関与しない細胞性免疫が働きます。

※免疫グロブリンとは血液中に含まれる抗体のことを言います。lgG・lgM・lgA・lgD・lgEの5種類があります。

なぜこのようなアレルギー反応が起きるのか西洋医学的にも原因は不明とされていますが、皮膚粘膜の状態や自律神経系のバランス・腸管免疫・胸腺の状態が因果関係として挙げられています。過剰なIgEなどの免疫細胞を抗アレルギー剤やステロイド剤を用いて瀬戸際で抑えているのが現状です。

1-2.アレルギーに関連する病気

1-2-1.花粉症

花粉症はⅠ型の即時型アレルギーに分類され 地域にもよりますが毎年1月から6月頃にかけてスギやヒノキの花粉に悩まされ、秋になるとイネ科の花粉あるいは通年で発症している方も珍しくなく、今や国民病と言われる程です。抗アレルギー・抗ヒスタミン剤あるいはステロイド剤を含む内服薬や点眼剤・点鼻薬などによりアレルギーの原因物質による炎症を抑えます。他に減感作療法や手術療法があります。

 1-2-2.気管支喘息

気管支喘息とは肺に通じる空気の通り道である気道が収縮し呼吸しづらい状態です。ヒューヒュー、ゼーゼーと言った喘鳴やせきやたんに悩まされ、睡眠の妨げとなったりします。原因は気管支の炎症であったり、ある種の食べ物や医薬品、環境の変化、アレルギー症状として発症する場合が考えられます。常に気道内に炎症をおこした状態で、発作が起きるとさらに気道の平滑筋が収縮し呼吸しづらくなります。特に春や秋などの季節の変わり目に悪化させてしまう傾向にあります。西洋薬ではステロイド剤の吸入を基本に気管支拡張剤(交感神経β受容体刺激薬・テオフィリン製剤・抗コリン薬)の内服や貼付薬になります。

 1-2-3.アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎の方は皮膚全体が乾燥し、肌のバリアー機能が充分でないために外からの刺激により炎症を引き起こしやすくなります。また元来のアレルギー体質(アトピー素因)があるために、体内にIgEを過剰に産生してしまうことが原因となります。痒みが特徴で汗をかきやすい夏場、最も乾燥する冬場、花粉の飛散する時期などに症状を悪化させてしまう傾向にあります。西洋薬としてはステロイド剤あるいは非ステロイド剤の外用薬、免疫抑制外用薬、ワセリンなどの保湿剤、内服薬としては抗ヒスタミン剤・抗アレルギー剤・免疫抑制薬になります。

2.漢方におけるアレルギーの考え方

季節に応じて飛散する花粉は花粉症の方にとって本当に厄介なものです。中医学ではそのような外的な発症要因を外邪(がいじゃ)と言っています。また外邪には風邪(ふうじゃ)・寒邪(かんじゃ)・暑邪(しょじゃ)・湿邪(しつじゃ)・熱邪(ねつじゃ)・燥邪(そうじゃ)の六つがあり、例えば花粉は風邪の侵入によるものと考えることができます。またそのような風邪による過敏なアレルギー症状は中医学では五臓学説や気血津液弁証と言われる理論によって対応します。五臓のうち取り分け肝、脾、肺、腎の機能低下や調和の乱れ、あるいは気・血・水(津液)の巡りが乱れていると考えるのです。この理論をそれぞれの体質を判断して当てはめていきます。

3.アレルギーに効果のある漢方薬

漢方薬は症状が皮膚にある場合、呼吸器や他の粘膜にある場合と発症部位により様々です。以下に代表的な漢方処方と漢方薬の考え方をご説明いたします。

3-1.温清飲

処方は当帰・地黄・芍薬・川芎・黄連・黄芩・黄柏・山梔子からなります。アトピー性皮膚炎の方は皮膚のバリアー機能が低下し、かさついた状態であることが多く、本剤には血の巡りを改善する四物湯を含んでいるため、かさついた皮膚や粘膜の保湿・修復が期待できます。

3-2.麻黄甘石湯

麻黄・杏仁・甘草・石膏からなる処方で気管や肺に熱を持った肺熱証に適応する漢方薬です。また逆に肺が冷えた状態(肺寒証)には小青龍湯を用います。 東洋医学では「肺は貯痰の器」と言われ、ある程度の粘液で潤っています。しかし気管支喘息などに代表される炎症により生成された余分な粘液(痰飲)を排出させることが症状改善につながります。

3-3.黄耆建中湯

処方は桂皮・芍薬・生姜・甘草・大棗・黄耆・膠飴からなり虚弱体質向きの漢方薬です。処方名になっている黄耆は人参と並び補気薬であり、建中とは胃腸の働きを助け建て上げる意味です。東洋医学では「脾は肌肉を司る」と言われていますが、外からの花粉やウイルス、細菌に対しての皮膚や粘膜の防衛「衛気」を養うのには胃腸の働きが大切だという意味です。花粉症やアトピー性皮膚炎のトラブルにお勧めいたします。

3-4.麦味地黄丸

麦味地黄丸は六味丸の処方成分である沢瀉・山薬・山茱萸・地黄・牡丹皮・茯苓に麦門冬と五味味を加味した内容で呼吸器系やアトピーなどの皮膚疾患など応用範囲が広い処方です。基本的には補腎薬で腎精を養い、皮膚や粘膜のバリアー強化として働きます。免疫細胞は骨髄と胸腺で作られますが、いずれも東洋医学では腎に配当されます。腎精を養い免疫を正すことがアレルギー体質の改善に繋がると考えます。

4.アレルギー治療に漢方薬を取り入れるには

アレルギー症状に悩む方は年々増加傾向にあります。症状を抑えることは出来ても、根治させることは西洋医学でも漢方薬でも困難であると言わざるを得ません。しかし漢方薬の継続服用によりアレルギー体質の改善は可能です。気・血・水(津液)や五臓のバランスを整えることはアレルギー症状だけでなく、免疫系疾患やあらゆる症状の予防にもなり得ますのでお勧めいたします。

4-1.選び方

西洋薬では体質如何に関わらずアレルギー反応を抑えるために抗アレルギー剤やステロイド剤などを用いて、水際で症状を抑えることになります。しかし漢方薬は実や虚の邪を抑えたりあるいは補ったり、五臓や気・血・水のバランスを整えたりと、より根本的に症状を改善させます。ですから漢方薬の効能効果だけでなく体質の見極めも大切なポイントになります。

4-2.使用期間

前述しましたように漢方薬はより根本的な治療になる反面、改善に時間を要します。焦らずにご継続頂いただくひとがとても大切です。一方で漢方薬にも気管支を拡張したり、炎症を直接鎮めたりする生薬も含んでいますので、必ずしも長く飲まないと変化がないとも言えません。早い段階で喘鳴や皮膚の痒み、鼻水などのアレルギー症状の改善を実感しつつ、さらに継続して体質改善がなされるのが理想です。

4-3.どこに相談すればいいか

漢方薬はいつも症状と体質に合ったものでなければなりません。お一人ひとりの体質を良く知る、かかりつけ漢方薬局の薬剤師や専門医との常日頃のコミュニケーションが大切です。

5.よくある質問

食事はどうしたらよいでしょうか?

そばや小麦などアレルゲンとなっている食材がはっきりしている場合は代用食品に切り替え、きるだけ摂取しないようにしていただき、そのうえで漢方薬を服用し体質改善されるのがより良いと考えます。またタンパク質や野菜をバランス良くしっかり摂ることも大切です。逆に加工食品や刺激物、外食はできるだけ控えるべきでしょう。経験的にアレルギー体質の方はフルーツを始めチョコレートなど甘いもの好きが多い傾向にあります。また砂糖だけでなく白米にしても、塩にしても精製されている食品もアレルギー体質の原因になるという認識が大切です。

食べ物以外に気を付けることはありますか?

シーツや布団カバー、部屋の掃除などマメに心掛け、生活環境を整えることも大切です。日常に於いてストレスや疲れをあまり溜めない工夫も大切です。散歩や気功法などを取り入れるのも良い方法でしょう。

6.まとめ

いかがでしょうか。アレルギーについて知ることはアレルギーを治すために必要不可欠です。ご来店のお客様にはもっと早くに知っていれば良かったとよく言われますが、今がその時です。お悩みの方は症状や体質に合わせた漢方薬をお勧めいたします。ご相談ください。

十字屋平蔵薬局 店主 富居 博典

監修者

富居 博典
十字屋平蔵薬局 店主

所属研究会・勉強会
東洋漢方研究会/伝統漢方研究会緑健会日本中医薬研究会

東京薬科大学卒業後、総合病院・調剤薬局での実務経験を経て、漢方専門薬局『十字屋平蔵薬局』を開業。

漢方薬だけでなく病気や症状・治療薬・医療全般についても精通しており、一人一人の治療経過や薬歴を踏まえた提案・養生指導が好評を得ている。地域情報誌にて健康コラム『平蔵の漢方相談』を連載。15年以上続く長寿コーナーとなっており、長きにわたって地元の人々に親しまれている。


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