実践に役立つ漢方薬の考え方と種類を漢方薬剤師が徹底解説

十字屋平蔵薬局 薬剤師 富居博典

記事監修
十字屋平蔵薬局 店長・薬剤師 富居博典
免責事項について

可能な限り信頼できる情報をもとに作成しておりますが、あくまでも私見ですのでご了承ください。内容に誤りがあった場合でも、当ブログの閲覧により生じたあらゆる損害・損失に対する責任は一切負いません。体調に異変を感じた際には、当ブログの情報のみで自己判断せず、必ず医療機関を受診してください。

漢方薬といえば葛根湯が有名ですが、それ以外にもさまざまな種類の漢方薬が存在しています。しかし、漢方薬は処方内容や生薬もすべて漢字で表記されているためとっつきにくく、その作用や働きなどは奥が深くわかりにくいものです。実際漢方薬を飲もうと思ってもどの漢方を飲んだら良いのか? 手軽に購入できそうだが飲み合わせや副作用は大丈夫なのか? 価格も様々でつい二の足を踏んでしまいます。

そこで初めての方にもわかりやすく漢方薬を以下のポイントでご説明します。

  1. 漢方薬の基礎知識
  2. 漢方薬の種類と効能
  3. 自分に合った漢方薬の選び方
  4. 漢方薬局に相談するべき理由
  5. よくある質問

1.漢方薬の基礎知識

漢方薬をはじめ東洋医学と現代医学は病気や症状に対する捉え方や対応が異なります。しかし両者の目指すところは健康維持であり病が癒されることです。現代医学を一方的に否定するものではなく、方法論は違っていても現代医学にも符合し、西洋医学のデーターを知ることにより漢方薬をより上手に用いることが可能だと考えます。

1-1.漢方薬とは?

日本で言われている漢方薬は韓国では韓方、中国では中薬(中成薬)にあたります。それぞれ生薬の組み合わせによって成り立っています。例えば葛根湯は処方名になっている葛根をはじめ桂枝、芍薬、生姜、甘草、大棗、麻黄の7種類です。それぞれに意味があり、作用の方向性のようなものがあります。

1-2.西洋医学との違い

だれもがご存知のアスピリンは元々柳の樹皮から抽出されたものです。また今ではインフルエンザの薬としてしられているタミフルも八角という香辛料を原料として合成された医薬品です。シャープに作用する反面、使い方を誤れば副作用も強く出ます。

1-3.漢方における薬効の考え方

西洋薬の成分の多くは単一成分である一方、漢方薬は複数の生薬を組み合わせることにより様々な作用が期待できます。まったく相反する作用の生薬が一緒に配合されることもあり漢方薬の不思議なところです。さらには漢方処方を複数組み合わせることも珍しくありません。このような総合的な働きは科学的な根拠に乏しく、今でも様々な不信にさらされることがあります。

1-4.体質改善・自然治癒力について

漢方薬の特徴の一つに人参や黄耆のような補剤にあります。これらはからだの体質を強化し、自然治癒力を高めます。残念ながらケミカルな医薬品はいくら服用しても元気にはなりません。漢方薬の優れている点と言えるでしょう。

1-5.効果のあらわれ方

西洋薬は現れている症状や原因に対してピンポイントに作用します。血圧が高ければ下げる、発熱していれば熱を下げ、痛みを緩和します。漢方薬にもそのような働きをするものはありますが、大きな特徴は体質など多面的に作用し、からだが治すのを助ける、より根本的な作用にあります。作用がマイルドな反面、ある程度継続する必要があります。

2.漢方薬の種類と効能

東洋医学ではからだの不調を「気(き)・血(けつ)・水(すい)」の変調として捉える考え方があります。以下に気と血と水のアンバランスを改善する代表的な漢方薬をご紹介いたします。
漢方薬をいくつかのカテゴリーに分類し、その中で代表的なものを解説していくことを想定しています。

2-1.気(き)の病の改善に対応する漢方薬


東洋医学の気とは生命の活力、エネルギーと言えます。この気が不足して元気がない状態を気虚と言い、気が滞って、もやもやした状態を気滞と言います。またイライラが募って爆発するような気の状態を気逆と言います。以下にそれぞれの状態に代表される処方をご紹介いたします。

2-1-1.半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

ハンゲ、ブクリョウ、ショウキョウ、コウボク、ソヨウの5種類の生薬からなり、気分のふさがった気鬱の症状に用いられる漢方薬です。処方名になっている半夏と厚朴が協調して気を巡らします。

2-1-2.柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

サイコ、ハンゲ、ブクリョウ、ケイヒ、オウゴン、タイソウ、ニンジン、リュウコツ、ボレイ、ショウキョウ、ダイオウからなり体質的には実証タイプでストレスが多く気の滞りのある気滞症状に主に用いられます。鎮静作用のある竜骨と牡蛎が加わり処方名になりました。

2-1-3.黄連解毒湯(おうれんげどくとう)

オウレン、オウゴン、オウバク、サンシシの4種類の生薬からなり、のぼせがありイライラが爆発するような気逆状態に用いられる実証タイプの処方です。

2-2.血(けつ)の病に対応する漢方薬


東洋医学の血(けつ)とは、一般的に言われる血液つまり赤血球や白血球などの血液成分そして栄養素も含めた血液の循環やその働き、貯蔵などの事です。ドロドロとしていて流の悪い瘀血(おけつ)、血が不足している血虚、熱を帯びた血熱に代表される処方を以下にご紹介いたします。

2-2-1.桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

ケイヒ、トウニン、シャクヤク、ブクリョウ、ボタンピの5種類の生薬からなる瘀血を解消する代表処方です。瘀血によるのぼせやイライラ感、痛みを伴うなど広範囲に用いられる処方です。

2-2-2.十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)

トウキ、ジオウ、シャクヤク、センキュウ、ビャクジュツ、ブクリョウ、オウギ、ニンジン、ケイヒ、カンゾウの10種類の生薬から構成されています。血を補うだけでなく気を補う働きもあり気血両虚の大補剤としてなくてはならない処方です。

2-2-3.清営顆粒(せいえいかりゅう)

ジオウ、シャクヤク、オウゴン、ダイオウ、サンシシ、ボタンピの6種類の生薬から構成されており、血熱による皮膚病や便秘、更年期障害を改善する漢方薬の一つです。

2-3.水(すい)の病に対応する漢方薬


漢方で水とは血以外の水分、リンパ液、汗などの水液の総称です。水は津液(しんえき)とも言われ、それが不足した状態を津液不足、さらにほてり、のぼせなどが加わった陰虚(いんきょ)、また逆に水液が滞った状態を水滞と言い3タイプに分類される代表的な処方をご紹介いたします。

2-3-1.麦門冬湯(ばくもんどうとう)

バクモン、カンゾウ、タイソウ、コウベイ、ニンジン、ハンゲの6種類からなる津液を補う漢方薬です。処方名になっている麦門冬は咽喉を潤す作用があり、声がかすれ、咳き込むような症状に用いられます。

2-3-2.六味地黄丸(ろくみじおうがん)

タクシャ、サンヤク、サンシュユ、ジオウ、ボタンピ、ブクリョウの6種類の生薬からなる漢方処方です。陰虚を解消する基本処方のひとつです。この処方にケイヒ、ブシを加えると八味丸となり、ゴシツとシャゼンシを加えると牛車腎気丸、キッカとクコシを加えると妃菊地黄丸となります。

2-3-3.真武湯(しんぶとう)

ビャクジュツ、ブシ、ブクリョウ、シャクヤク、ショウキョウの5種類の生薬からなる漢方処方で冷えが強く新陳代謝が衰え水液が滞った状態を解消する処方です。

3.自分に合った漢方薬の選び方

3-1.症状と体質を正しく知ること

漢方薬を飲む前に大切なのは自分自身の症状と体質を正確に把握することです。西洋医学は病名に合った治療をしますが、漢方薬は病気だけでなく、体質の把握が大切です。例えば体力面では実証と虚証そして中間証と大きく三つに分類しますが自分の体力がどの程度かを客観的に捉えることが大切です。

3-2.体質に合った漢方薬であること

次に大切なのは体質に見合った漢方薬であることです。例えば体質的に冷え症で弱い体質であれば、附子や人参、黄耆などを含む処方が多用されます。早く治したいからと言って強い漢方薬を服用しても早く治るどころか、副作用の原因になることもあり得ます。

3-3.困っている症状に合っていること

例えば症状は血の病だとします。さらに症状に血の不足つまり血虚が関与し体質的に冷え症で弱い体質であれば、当帰芍薬散であったり温経湯などが候補に上げられます。

4.漢方薬局に相談するべき理由

4-1.症状と体質を相談することができます


漢方専門の薬局には他の方を気にせずに、病気や症状のことを相談できるスペースを設けております。診断はできませんが、相談あるいはカウンセリングと言う形でお話しをお伺いし、症状だけでなく体質を確認します。漢方薬をお飲みになるかどうか迷われている方でも相談は可能ですので気軽にお尋ねください。また薬局によっては予約制となっている場合がありますので予めご確認ください。

4-2.あなたに合った漢方薬を提案してくれます


漢方薬は煎じ薬からエキス剤など商品が多数ございます。その中から一人ひとりにあった漢方薬を提案してくれます。またご予算などある場合はお気軽におっしゃってください。

4-3.漢方薬だけでなく生活の養生も指導してくれます


症状改善には普段の生活の注意点や養生も大切で、漢方薬を飲んでいればそれで良いと言うものではありません。出来るだけ早く良くなって頂くために、また症状を繰り返さないよう指導してくれるのが漢方薬局の大きな特徴であり付加価値と言えます。

5.よくある質問

漢方薬の種類はどれくらいありますか?
薬局では都道府県からの承認を受けることによって薬局内で製造販売できる医薬品(薬局製剤)が多数あります。申請する数は薬局により異なりますが漢方薬の製造は200種類以上になります。またエキス剤、散剤、丸剤、民間薬など市販されている漢方系商品を合わせると500種類程になります。

生薬はどのようなものがありますか?
前述しましたように漢方薬は複数の生薬から構成されています。その生薬は動物性と植物性そして鉱物性の三種類がありますが、その多くは植物性であり根や茎、葉、実や種子などです。動物性は牛黄、熊胆、阿膠、反鼻、鶏内金などがあり、鉱物性の生薬には石膏、竜骨、代赭石などです。特に動物性生薬は量産できませんので希少価値が高く、値の張るものが多くあります。

採取した生薬をそのまま混ぜて製品化しているのでしょうか?
生薬は採取された後、修治(しゅうち)と言われる加工処理を経て漢方生薬として用いられます。修事(しゅうじ)、炮製(ほうせい)とも言われる作業で生薬のマイナス面である毒性を軽減し、プラス面の薬効を引出します。水洗いや切断から炒めたり、蒸したり陰干したりします。

漢方薬の原料はどこなのでしょうか?
メーカーによっても違いますので一概には言えませんが中国産が多くを占めます。一つの生薬でも日本産や中国産、韓国、ベトナム、インドなど様々です。特定の気候風土や土壌などに育った生薬だからこそ産地にこだわり生産され続けています。またどこの産地であっても日本の残留農薬や重金属の検査基準を経て使用されている漢方生薬です。ご安心ください。

漢方薬は苦く飲みにくいのでしょうか?

漢方薬のすべてが苦いと言う訳ではありません。辛いものや甘いもの、香りが良いものなど様々です。このような味や香りも薬効の一部で比較的疲れを補うものは甘みがあり、炎症を鎮める漢方薬は苦みがあります。また温める漢方薬には辛いものもあり食養生にも通じる部分があります。お一人ひとりにより感じ方は違うものですが、しばしば「自分に合っている漢方薬は飲みやすく、合わないと飲みにくい」と考える方がいますが、必ずしもそうではありません。いずれにしましても多くの方は自然に飲めていますのでご安心ください。

6.まとめ

漢方薬を「気・血・水」の考えで分類して、いくつかの処方をご紹介しましたがいかがでしょうか、ご理解いただけましたでしょうか。複雑で奥が深い漢方薬ですが、「気・血・水」の観点から漢方薬を理解し体質を捉えることが基本だと考えます。お悩みの症状と体質に合った漢方薬が必ずあります。参考にしてください。

十字屋平蔵薬局 店主 富居 博典

監修者

富居 博典
十字屋平蔵薬局 店主

所属研究会・勉強会
東洋漢方研究会/伝統漢方研究会緑健会日本中医薬研究会

東京薬科大学卒業後、総合病院・調剤薬局での実務経験を経て、漢方専門薬局『十字屋平蔵薬局』を開業。

漢方薬だけでなく病気や症状・治療薬・医療全般についても精通しており、一人一人の治療経過や薬歴を踏まえた提案・養生指導が好評を得ている。地域情報誌にて健康コラム『平蔵の漢方相談』を連載。15年以上続く長寿コーナーとなっており、長きにわたって地元の人々に親しまれている。


十字屋平蔵薬局