不妊治療に漢方薬が使えるって本当? 使い方や効能を紹介します。

十字屋平蔵薬局 薬剤師 富居博典

記事監修
十字屋平蔵薬局 店長・薬剤師 富居博典
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不妊とは、妊娠を望んでいる健康なカップルが1年間行為を行っても妊娠しない状況を指します。晩婚化も進んでいる現在は、7組に1組のカップルが不妊といわれており、毎年10万人を超える方々が不妊治療を受けているのです。不妊には、子宮筋腫や子宮内膜症・精子の数が少ないなど原因がはっきりと分かっているケースもありますが、特に原因がないのに赤ちゃんができないというカップルもたくさんいます。そんな方は、漢方薬による治療が効果的なこともあるもです。

そこで、今回は不妊に効果のある漢方についてご紹介しましょう。

  1. 漢方薬とはどのような薬?
  2. 漢方と不妊治療について
  3. 漢方薬で行う体質改善とは?
  4. 漢方薬で行う不妊治療に使われる薬や注意点
  5. 漢方薬を処方してもらう方法
  6. 漢方薬を不妊治療に使ってみたい方のよくある質問

漢方を治療に取り入れれば、治療方法の選択肢はより広がります。不妊治療をしている方や不妊治療に漢方薬を取り入れてみたいという方は、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。

1.漢方薬とはどのような薬?

はじめに、漢方薬の特徴や漢方薬と病院で処方される一般的な薬との違いをご紹介します。漢方薬と普通の薬は何が違うのでしょうか?

1-1.東洋医学と漢方薬

漢方薬は、東洋医学の考え方に基づいて調合されて処方される薬です。東洋医学は中国を中心に西洋医学とは異なる考え方で病気と向き合い続けてきました。現在は、東洋医学の考え方や漢方薬を治療に取り入れる医師も多く、漢方医や漢方薬剤師といった専門職も生まれています。

1-2.漢方薬と病院で処方される薬との違い

病院で処方される薬や市販薬は、症状に効く成分を化学合成したものです。そのため即効性は期待できますが、副作用が出たり長期間飲み続けることができなかったりします。

一方、漢方薬は薬効成分を含む草木などをそのまま薬にしているのです。これを、生薬といいます。草木をそのまま使用していますので、病院で処方される薬よりも効き目がゆるやかで、副作用が出ることも少ないのです。また、長期間にわたって飲み続けることができます。その一方で、即効性は期待できません。

1-3.東洋医学における病気との向き合い方

西洋医学では、健康を害している原因を取り除くことを目的としています。ですから、ウィルスや細菌が原因の病気やガンなどの悪性腫瘍を治療する場合は、大変効果的です。しかし、その一方で原因がよく分からない体の不調や、冷え性などの体質的な体の不調の改善は苦手で、痛みを鎮めるなど対症療法しか行えない場合もあります。

東洋医学では、気(生命エネルギーや神経系統)・血(血液)・水(血液以外の体液)が、バランスよく体を巡っていることが健康で、流れが滞ったり量が少なくなったりすると病気になると考えているのです。そのため、体の調子を整えて自己免疫力をアップしたり体質を変えたりすることで、病気に打ち勝とうとします。ですから、原因のはっきりしない慢性的な不調も改善させることができるのです。漢方薬も冷え性や疲れ・ストレスに効果的なものがたくさんあります。

どちらが優れているというわけでなく、病気の種類によって治療の得手不得手があるということです。

2.漢方と不妊治療について

では、不妊を漢方で治すことは可能でしょうか? この項では、病院で行う不妊治療と東洋医学の考え方に基づき、漢方薬を用いて行う不妊治療との違いなどをご紹介します。

2-1.病院で行う不妊治療とは?

病院で行う不妊治療とは、妊娠できない理由を探り治療を行ったり医学の力で妊娠を手助けすることです。例えば、子宮内膜症や子宮筋腫・卵巣嚢腫・精子の数が少ないなど妊娠ができない明確な理由がある場合、病院での不妊治療はとても効果的でしょう。病気を治療したり人工授精を行ったりすることで、妊娠することができたカップルもたくさんいます。しかし、その一方で明確な理由がはっきりと分からない不妊も多いのです。例えば、冷えやストレス・生活習慣によるホルモンバランスの乱れなどをの治療は、現代医学でも難しいでしょう。

2-2.東洋医学の見地から行う不妊治療とは?

前述したように、東洋医学では気・血・水の3つが乱れたり足りなくなったりして病気が起こると考えられています。ですから、漢方薬を使って乱れた気・血・水の流れを調えたり満たしたりして、体を健康な状態に戻すのです。ですから、冷えやストレスといった漠然とした原因の不妊でも、一定の効果を期待することができます。その一方で、子宮内膜症や子宮筋腫・精子が少ないといった免疫力を高めたり、体質を変えたりしても治らない病気が原因の不妊症を治療するのには適していません。

2-3.西洋医学と東洋医学の不妊治療の違いとは?

こうして比べてみると、西洋医学は不妊の原因を見つけ出して治療することが中心なのに対し、東洋医学では長年の生活習慣などで妊娠しにくくなった体質を気・血・水を調えることで、妊娠しやすいように体質を改善しやすくしていきます。ですから、まずは不妊の原因を病院で調べてもらい、その上でどのような治療方法を選ぶかを考えるとよいでしょう。

2-4.漢方薬を使った治療と病院の治療を同時に行うことはできるの?

現在は、漢方薬を治療の一環として積極的に取り入れている産婦人科医はたくさんいます。漢方薬で体質を改善しつつ現代医学の技術を使って妊娠をサポートすれば、より効果が出やすいでしょう。両方の治療を一緒に受けたい場合は、漢方薬を積極的に取り入れて治療を行っている病院を選択するとよいですね。

3.漢方薬で行う体質改善とは?

東洋医学では、患者の症状などから不妊の原因を

  • 血が少ない血虚(けっきょ)
  • 気が足りない気虚(ききょ)
  • 血が滞る(お血)

などにグループ分けし、それぞれに適した漢方薬を処方します。この治療は単に不妊だけでなく冷えや疲れやすさ・貧血・月経痛なども改善する効果が期待できるのです。

4.漢方薬で行う不妊治療に使われる薬や注意点

この項では、不妊治療に使われる漢方薬の種類や治療の注意点をご紹介します。どんな薬が使われるのでしょうか?

4-1.女性に使われることの多い漢方薬

女性の場合は、血や気が足りなかったり冷えが血の流れを滞らせたりしているケースが多いため、

  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) 全身に栄養を与え血行を促進させると同時に、余分な水を排出してむくみを解消する
  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう) 疲れやすさを改善する
  • 温経湯(うんけいとう) 月経不順を改善し、妊娠しやすい体を作る

などの漢方薬が処方されます。

4-2.男性に使われることの多い漢方薬

男性の場合は、生殖能力に関わる「腎」を強化し、気と血を充実させる漢方薬が処方されることが多いでしょう。一例をあげると

  • 参茸補血丸(さんじょうほけつがん) 気や血を補う効力
  • 参馬補腎丸(じんばほじんがん) 腎を強化する

などです。

4-3.漢方薬を使った治療をする際の注意点

漢方薬は生薬ですから、病院で処方される薬よりも効き目が穏やかな反面、即効性は期待できません。ですから、最低でも2週間~1か月は服薬しないと効果は実感しにくいのです。ですから、不妊治療のスタート同時に飲み始めましょう。また、漢方薬はれっきとした薬ですから、サプリメントや健康食品のような感覚で使用してはいけません。用法と用量を守り、毎日決まった時間に服薬しましょう。

また、漢方薬は副作用がないと思われがちですが、そんなことはありません。特に、他の薬を服薬している場合は要注意です。漢方薬はインターネット通販などで購入も可能ですが、やはり最初は薬局で説明を受けて購入した方がよいでしょう。

5.漢方薬を処方してもらう方法

この項では、漢方薬を処方してもらう方法をご紹介します。ぜひ参考にしてください。

5-1.漢方薬局を利用する

不妊治療で漢方薬を使う場合、漢方薬局で自分に合った薬を調合してもらうのがおすすめです。病院によっては、漢方薬局を紹介してくれるところもあります。また、不妊に効く漢方薬を取り扱っていることをサイトなどで宣伝している薬局もありますので、そのような場所を利用してもよいでしょう。最近の漢方薬局は、初めての方でも利用しやすいように相談窓口などを設けているところも増えています。

5-2.自分に合った漢方薬調剤までの流れ

漢方薬局では、薬剤師による問診や舌の検診などがあります。必要なことなので包み隠さず答えましょう。漢方薬は高価なものというイメージを持っている方もいるかもしれませんが、病院で処方される薬の値段とほぼ同じです。高価な生薬もありますが、顧客の許可なしに勝手にそのようなものを使うことはありません。

漢方薬は粉薬か煎じ薬として出されることが一般的ですが、薬局によってはカプセルでも処方してくれます。飲み方や飲む時間をよく聞いてから服薬を始めましょう。

5-3.注意点

漢方薬は生薬ですから、1か月分・2週間分などと処方されたら、その期間で飲みきるようにしてください。また、病院で処方された薬と一緒に飲みたい場合は、必ず医師と薬剤師に相談をしましょう。

6.漢方薬を不妊治療に使ってみたい方のよくある質問

Q.漢方薬は年単位で飲まないといけないものでしょうか?
A.そんなことはありません。早い方では1~2か月で効果が実感できる方もいます。また、年単位で飲み続ければ冷え性やむくみやすさなども改善する効果が期待できるでしょう。

Q.効果が実感できた漢方薬と同じものならば、通販を利用しても大丈夫ですか?
A.かまいませんが、調剤してもらった漢方薬ですと同じものはありません。同じ薬局に通う必要があります。

Q.漢方薬は何で飲むのがよいのでしょうか?
A.常温の水か白湯がおすすめです。苦い場合はオブラートを使ってください。

Q.うっかり1回分飲み忘れてしまいましたが、大丈夫ですか?
A.1回くらいなら大丈夫ですが、飲んだり飲まなかったりが続くと効果が期待できなくなります。気を付つけましょう。

Q.漢方薬局はどのようなところを利用するのがおすすめですか?
A.不妊に効果のある漢方薬を多く取り扱っていたり、薬剤師が不妊に関する治療の相談に乗ってくれたりするところがよいでしょう。

7.おわりに

いかがでしたか? 今回は、漢方薬を利用した不妊治療についていろいろとご紹介しました。漢方薬は万能薬ではありませんが、西洋医学では治療が難しい体質や体の不調も治療できる可能性があります。また、長期的に飲み続けることもできますので、体質改善にも効果的です。ぜひ選択肢の一つに、漢方薬を入れてみてください。

十字屋平蔵薬局 店主 富居 博典

監修者

富居 博典
十字屋平蔵薬局 店主

所属研究会・勉強会
東洋漢方研究会/伝統漢方研究会緑健会日本中医薬研究会

東京薬科大学卒業後、総合病院・調剤薬局での実務経験を経て、漢方専門薬局『十字屋平蔵薬局』を開業。

漢方薬だけでなく病気や症状・治療薬・医療全般についても精通しており、一人一人の治療経過や薬歴を踏まえた提案・養生指導が好評を得ている。地域情報誌にて健康コラム『平蔵の漢方相談』を連載。15年以上続く長寿コーナーとなっており、長きにわたって地元の人々に親しまれている。


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